優しくなりたかった


この瞬間に気がつく

この瞬間しか分からない

ああ 空はこんなにも広かったんだっけ

そんな事に今更気付かされ

物凄い速さで遠ざかっていく空を

ただただ見つめることしかできない

だってもうこれ以上 頭は回らないから


君は僕が死んだら嬉しくて笑うの?

おかしくて笑うの?

それとも素っ気なく笑うのだろうか 僕なんかのために


ああ あの時

もっと素直に出来てたら

真っ直ぐで 素直な眼差し

行く道を照らす目の中の灯は

いつからか消えてしまった


優しくなりたかった

ただ優しくなりたかった


果てしない空の下には

終わりのある冷たくて硬いコンクリート

それだけだった


私の心


私の中の 消えかけそうなもの

私の中で 微かに生きてるもの


ふと 思い出す

空がこんなにも果てしなく 広がっている事

かたつむりがこんなにも ゆっくり移動する事


何もかも 忘れていた

あまりに早く 列車が流れるもので

あまりに早く 人が雪崩れるもので

人が死んでいく事にも 気がつかなかった


私の中の 消えかけそうなもの

私の中で 微かに生きてるもの


ふと 我に帰る

君の笑顔の裏原に 隠れてるもの

毒キノコに潜む 1人では生きれない虫


何もかも 信じられなかった

こんなにも簡単に 心は共有されるもので

こんなにも 人の心は入り組んでるもので


今宵 あの星の名前も知らずに

君は此の世を去るのか

余りに膨大な夜空を前に 思考は追いつかず

それは 私の心の狭さを思い知らされたような気がして

なんだか 少し笑えて

ちょっぴり 物悲しかった


私の中の 消えかけそうなもの

私の中で 微かに生きてるもの


いつまでも 心を彷徨う

微かに 寂しそうに笑う

君の横顔


僕は人間兵器


僕が人間だった頃

僕が生きていた頃


あの頃はきっと笑えていた

些細なことも 幸せだった

でも そんな事に気づくはずもなく


今は何もかもがモノクロになって

有機物と無機物の違いも分からなくなってしまった

全てが同じに見える


笑っても笑ってなくても同じ

殺しても殺さなくても同じ


綺麗な葉っぱの緑も

暗い裏道のネオンも

生き物の身体に流れてる綺麗な紅い液体も


皆んな 無彩色の世界に閉じこもってしまった



僕は歩く人間兵器


色を吸い取る人間兵器

笑顔を吸い取る人間兵器


もうあの頃のように 笑えない 戻れない


一度だけでも

皆んなのために 君のために

なれることがあるのなら

どんなに幸せだったのか


もう 君の存在も

モノクロの世界に溶け込んで

景色と区別が付かなくなったよ


僕は嘲笑う人間兵器


世のために出来ることは一つ

それは 世のために死ぬ事

ジサツする事


知りたかった

僕の存在意義

知りたくなかった

僕の存在意義

僕の存在する意味を 誰か

教えて欲しかった


明日も




朝目が覚める。


何もするあてもなくフラフラ外に出る。


また帰る。


寝る。



そんな事をくり返す。



時が流れるとともに鼓動を刻み、生きていたくもない命を繋いでいく。

どうせ死ねない事は分かっているから。



命を繋ぐ。


今生きている生命はそれが役目なのかも分からない。


朝起きること、歯を磨くこと、箸を使ってご飯を食べること。


何気ない事が次の時代へと繋げ、歴史を作る。


毎日毎日、無性にお腹だけは減り、食べても食べても何も満たされない毎日。



僕は何のために生きているのだろう。

そんな質問しても


そんなん自分だって何のためにも生きてないよって

ほとんどの人がそう口にする。


分からない方が良いことなのかもしれないし、はたまた探し当てのないものなのかも分からない。



自分は何ですかと聞かれて

そこらへんに落ちてるタバコの吸殻ですというと

いつも笑われる。


それが、一番伝わりやすいかなと、優しさでそう言ってあげてるのに。


ああそうかい、俺はそんなタバコのポイ捨てと4年間も付き合わされてるのかい。

そう言われて




ああもう自分、死んでやろう。



そう思った。



何度も何度も何度も思う。

でも本当は死にたくないし、死ねないし、弱い生き物。


人間の形をしているのが精一杯。


死ぬのなんか、怖いに決まってる。

きっときっときっと、死ぬことは素晴らしいことなのに。


そう思って死んでいけたらどんなに良いのだろう。



そう思った瞬間に、きっといち早くジサツするのだろう。

きっと明日も明後日も、1年後も10年後も


僕は消えて無くなりたい。



最後のページ


赤く燃え上がる隕石が飛び込んで来た

街行く交差する人々

あちこちからざわめく声

まるで邦画みたいに揺らぐ世界


限られた世界を浮遊する

終わりのある自由を敬愛する

今日も僕は生きた幽霊


ねぇこの世がもし

この世界が本当に消えてしまうなら

なんて馬鹿みたいだったのだと

一度でも笑ってみたかったのに


僕の行く道を照らして

帰れないように

戻れないように

宇宙船のような

一方通行の道を見つけたかった


赤く燃え上がる世界は

神秘的で綺麗だった

一瞬の幻

僅かな物語


分かち合う



情を入れてはいけない。


これは、ルールだ。

汚れなきふたりが、ギリギリの関係を保っていくための、ルール。


認められようと考えた瞬間

そのふたりの世界は滅んでしまう。


でも人間なら誰しも、生きていくために誰かに認められたいと思うのは、生理的な現象である。当たり前のことだ。

弱くて愚かな生き者なのだ。


嫌い、嫌い、嫌い、嫌い、嫌い嫌い嫌い嫌い嫌い嫌い嫌い嫌い嫌い嫌い


今日もこの言葉を聞きながら生き絶えそうになるのを耐える。

彼のその言葉は聞き慣れた。だからもう、良いんだ。


我慢したら、大丈夫?今日も頑張ったね、と、優しく抱きしめてくれる。

だから、どんな事も頑張れる。耐えてみせる。

死ねって言われたって、家族に認められなくたって


"例え、君が俺を嫌いだって"


爪だって剥いでみせる。

虫だって食べてみせる。

トイレに顔を突っ込んでみせる。

命令された事は全部受け入れる。


俺は何をやっても死なないし、死ねないから。

一瞬でも死んだ方が幸せかもしれないと、何度か思う。


弱いから、誰もが思ってるほど強くないから、だから、そうするしかないんだ。



でも、今日は…


「ねぇ、いつもみたいにさ、抱きしめてよ…。」


「は…?何考えてるの、そもそも、ルールがあるだろ、僕たちの…。」


待って、待って……、ねぇ。


「な、なんで…。」

なんとなくわかってる、わかってるけど。


「飽きた。君って何やっても物欲しそうにするんだもの、やり甲斐がない。もう君がいなくても、生きていける。」



そんな…………。


そう、俺はルールを破ってしまっていた。

取り返しがつかなくなった、どうしよう。



「俺は……。君のためなら、何だってやってみせる。」


そこに散らばってる刃物の中から適当に刃の向いた錆びてるカッターを持った。

そして


ビチャ、、、

ビチャ、ビチャ、ビチャ


ピシャッッッッ


自分の左手首を斬り始めた。

何度も何度も、繰り返し繰り返しカッターに力を入れ、手前に引く作業を繰り返す。


彼の頰に血飛沫が飛んだ。

彼は驚いて、その場で動きが止まった。

自分から目を離さなくなった。

目が真っ白になっているように見えた。

命令以外で自分を傷つけたのは、初めてだ。


痛い、痛い、痛い


斬った直後に、神経が空気に触れた傷口に染みて、あり得ないくらい痛くてビリビリしたものが手首に残る。

濃く赤くどろっとした液体が腕に、地面に滴った。


でも、斬るのをやめなかった。


「俺は、何だってやってみせる。君の心を満たすために、楽しませるために、何だって、何だって、やってみせる。」



ハハハハハ、ハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ、ウキャキャキャキャキャキャキャキャキャキャキャキャキャキャキャキャキャキャキャキャキャキャキャキャキャキャ


もう、何も、俺は、怖くないんだ、そうだ、そのはずだ。

なのに……。



「だから、嫌いなんだよ。」


その言葉を捨て、彼は去っていった。



俺は、その場で倒れこむように座った。

脚に力が入らなかった。



馬鹿らしくなった。

涙が溢れてきた。止まらなかった。


何度斬ったって、何度も何度も斬ったって、こころは満たされなくなっていた。



どこに向かっているのだろう。

分かち合うってこんなにも難しい事だっけ。




独りぼっち


彼は血が好きみたいだ。

俺の血を見て、それを舐めて、味わって、興奮している。

その他にも、生き物の悲鳴とか、生き物が痛みに耐えてる姿とか、好きらしい。

だから、俺はその道具としてしか見られていない。性処理道具。

でもいいんだ、自分という人間が否定されないだけ、幸せなんだと思う。


「他人が不幸になった方が幸せ。」

彼は当たり前のように、そう言った。

もちろんそんな言葉、周りからは煙たがられる対象となった。

皆んな彼を嫌な目で見る。

あいつ、嫌なやつだって。

彼は、間違ってるって。

でも俺は、そうは思わなかった。

きっと、誰だってそんなこと思ったり、一度でも世の中や人生をクソだと思ったりするはずだ。

誰もが思う事なのに、皆否定するんだ。

そんな事思った事もない、そんな考えは突拍子もないとでも言うように。


皆んな、嘘つきだ。

誰もが、幸せをアピールする。

等身大より大きくなろうとする。

正論の中だけで生きようとする。

自分を偽ってまで、そうするのだ。


だから、僕は彼の言葉に心を打たれた。

彼は、強いと思った。

だから、独りぼっちなんだ。

凄く、寂しいのだ。


どうして誰も気づいてあげられないのだろう。

彼は、孤独なのに。

最も人間らしいのに。

いつも1人で戦ってる。

だから、支えてあげたい。

力になりたいのだ。


ありのままでいてほしいから。