夏の思い出


暑い夏の日
チリチリとした日差し
蚊は、生きてるかも分からずにフラフラと夏の世界を飛び回る
だから、死ぬ怖さも分からないんだ


夏の白くて冷たいアスファルトの上
一匹の蚊は呆気なくそこに落ちていた

人間の手で奪われた命
生きている事や、死んでしまう怖さも分からないまま、ただそこで息を引き取っていた

人間も蚊も、惨さも残酷さを理解できない
分からないのだ
同じ生き物じゃないから
でも、白いアスファルトの上に映える黒い物体は、何故かそれを思い知らざる終えなかった

この不条理な世の中を作っているのは人間で
自分もその1人なのだと、当たり前のようで分かりづらく仕組まれた世界なのだと

白い地面の上のどの色とも交わらない黒く染まる蚊は私にそう、訴えかけてきた


いい思い出があるわけでもなく、悪い思い出があるわけでもない
ただ、トンネルの向こう側の入道雲がくっきりとした青い空を見ると、何故だか心が揺れ動いてしまう


それが、夏