ひとひら


僕の目の前に一枚、桜の花びらがぴらぴらと回転しながら美しく舞い落ちた。


僕は突然、どうしようもなく胸が苦しくなった。

苦しくて、途方に暮れた。


僕は、生きてる幸せを感じたかった。噛み締めたかった。それだけなのに、それだけなのに。

何でこんなに、苦しくなるのだろう。

何もかも自分じゃない。

でも、自分だと認めざる終えないのだ。


桜の優しい薄桃色はとても、真っ直ぐで、素直で、僕にはあまりにも似合わない。


虚無感。

5月に散る桜は、僕を寂しくする。

僕は、暗い終わり無い迷路の中でひとりぼっち。

僕を、僕をどうか、独りにしないで。

あまりに寂しくて、息が出来なくなるくらい胸が締め付けられて、死んでしまう。


紙が千切れるように胸が痛むので、耐えきれなくて、僕は大声を上げた。

ひたすら、叫ぶ。叫ぶ、叫ぶ、叫ぶ。

僕はずっとずっと永遠に連なる桜の木の道を、体の中の内臓を全部吐き出しそうになるくらい叫びながら、全力疾走した。僕の視界は涙でピンク色にぼやけた。

涙が落ちても、花びらが額をくすぐっても僕は構わず、ずっとずっと叫んだ


桜の花びらで埋まる道を、思いっきり踏んづけながら僕は、止まることなくずっと走っていった。