よわむし。


僕は、いい奴にもわるい奴にもなれなかった。

ただの「弱いやつ」でしかなかったのだ。

無力で無価値でしかもすぐいい気になる。余計な感情は、虫より頭も悪い。

そんな僕には「弱虫」という言葉がお似合いだ。


虫、虫虫虫虫虫虫虫虫虫虫虫虫虫虫虫虫。


今日もこの文字を顔に書いて僕は、学校に行く。

目に見えないナイフ、それはあまり慣れない。

きっときっと、誰も僕のことを認めてくれない。認めてもらえないのだ。だって、その刄は僕にしか見えないのだ。幽霊を信じてもらえないのと同じだ。


本当は、本当は脚が折れてるのに。手が千切れてるのに。誰も、僕のことを、辛いね、とは言わない。

だって、脚は折れてないし、手はちゃんと付いている。

どこからどうみても、健康な身体つきだ。


だから皆は、口を揃えてこういう。



弱虫、と。


まあ当たり前だよね。

この世の中の真実なんか、目に見えるものではないことは、誰もが分かっているはずなのに。

目に見える確かなものでない限り、誰も信じるわけがない。そんな誰でも分かる当たり前に僕は、シネの二文字でしか片付けることが出来ない屑野郎なのだ。


そうか、ならば、手が無ければ、脚がなければ、目が見えなければ、僕は、僕は、みんなに認めてもらえるのかもしれない。


僕は今日も、シャーペンを右手に持ち、自分の目玉にそのままぶっ刺した。


ぐぢゅぐぢゅ、と、目玉の肉の中を裂くように、無理矢理押し通した。

どす黒い血が、ドバドバと溢れてくる。


これで、これで、認めてもらえる。

だって、これなら、犬でもわかるだろ?


僕の欠けた心は、大量の血で満たされた気がした。