君からもらった傷は一生モノ



きみからもらった傷は

僕の一生モノ


この傷を、眩しく霞む空で馴染ませても

なぜかもっと傷は痛くて沁みる


こんなにも愛おしいよ

きみからもらった傷

この傷なしでは生きていけないよ

この世のもの全てが愛おしいよ

僕1人では抱えきれなくて

いつかパチンとシャボン玉のように呆気なく消えてしまいそうだ、何もかも

だから、僕は僕を傷つないとやっていけない


きみからもらった傷だけは

確かなものだよ

この世の全てが消えてしまっても

傷だけは残るよ

愛おしいくて抱えきれないよ

君からもらった傷


僕は僕が消えないため

この目で分かるように印という名の傷付けるよ

傷だけは確かなものだよ


君からもらった傷は

一生モノだよ


大事に大事にできるかな

消えないようにもっと深く深く自分で彫るよ

赤い液体が邪魔をする

ベトベトして滑っちゃう

僕が僕として死なないために

僕の体が死んでしまっても、本当に僕が僕として死なないために



歪んだ愛情



私の子の名前は、ルキ

どこにでもいる、普通の男の子


ルキの目は、ずっと前に死んでしまった私の夫にそっくりだった

どこか寂しそうで、健気な人だった


ルキは立派に夫の遺伝子を受け継いでいた

ルキは、私のもの…私のものだ


「ルキ、あのね、私あなたのこと、好き」

「お母さん、僕も大好きだよ」


「ルキ、違うの…」

私は、ルキの頰に手を乗せる

そして、口を重ねた


「違うのルキ、好きってこういう事…」

「どういうこと?」

ルキはキョトンとした

そうだ、まだルキはそこまで大きくない

まだ分からない

なら、私がルキの一番になる…

だって、私の子だから、何しても構わないよね?


ルキは私の子

私の大切な子供

たった1人の家族

あの子をどこへも行かせない


「ルキ、本当に私のこと好き?」

「お母さん、大好きだよ」


「そう、なら、どこへも行かないで」

「お母さん、どういうこと?」

ルキは何も知らない子猫のような顔つきでキョトンとしていた


「違う人の元へ行ったらね」

私はルキの首元へ両手をやり

そして、細いルキの首を締め始めた


ルキが呻き声を上げている


楽しかった

ルキが苦しんでる姿を見て

どんどん自分のものになっていく実感が下から


「もし、違う人の元へ行ったら、こうするから」

お母さん、分かったから、行かないから!


ルキが泣きながら苦しそうに言葉にならない声で言った

私は首から手を離した



それから私はルキとの奇妙な関係を持ち始めた

ーーーそれからーーー



「お母さん、俺ね、こんなに大きくなったんだよ」


ルキは男の子の中じゃ背は低い方だ。でも、私よりは確実に大きくなっていた。

いや、ルキはもう、少年ではなく、男なのかもしれない。


「お母さん、愛してる」


今まで、私からルキを襲っていた

全てを奪っていた

でも今は

私は、狩られる方になっていた

怖くなった

ルキが、私より、大きくなった


ルキは、私を床に押し倒した後、私の首を締め始めた


「ルキっっそれは、やめて、、ゔ」

「お母さん、好き、好き、愛してる」


やめて、ルキ、やめて、違うの、そうじゃない


私がいけなかった、私が全ていけなかった、ごめんなさい、神様、ごめんなさい、ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい

ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい


ルキはあれよという間に私の服と下着を脱がし始めた


バチが当たった

私の思うがままに育てたから

ルキの感情が狂ってしまった

私のせいだ


私が、夫の姿を忘れられなかったから

ずっとずっと、夫を待っていた

愛していた

それが、こんなにもいけないことだったなんて

なんて理不尽なの

神様

私は死んだほうがいいです


「ルキ、それは、待って」

ルキが私の中に入ってきた

ルキはもう私の言うことなんて聞いてなかった

私の服も髪もボサボサになっていた


私………私は…………


そこにナイフが落ちていた

そうだ、これで、全てを終わらせよう

これは、私とルキの代で終わらせなければならない


私はルキのお腹にナイフを刺した

血がビチャッと飛び散らかった


ルキは悲鳴をあげていた

お母さん、こんなにも愛していたのに…とオロオロし始めた



私も、これで死ねる…

一緒に死のう



ルキ、産んでごめんね


愛してた…….…




ルキ



「お母さん…」


「お母さん…」


俺ね、こんなに大きくなったんだ……



嫌よ!!嫌だ…!!

お母さんの抵抗する声が聞こえる

お母さんの抗う声がする

でも、お母さんは、俺のこと、好きだよね?


無理やりお母さんの服を脱がした

嫌がるお母さんを振り切って、その下に着てる下着も剥ぎ取る


昔お母さんから教わった、色んなこと

ぼくりょくはいけないこと

せいてきぼうこうはいけないこと

でもおかあさん

おかあさん

おかあさん

おかあさん

お母さん、俺のこと、こんなに、愛してるもんね?

だから、関係ないよね

だってお母さん、昔も俺に、同じことしてたよね

好きだからだよね

なら俺も、期待に応えなきゃ


お母さん…好き

お母さん…好き



歪んだ感情

曲がった愛情

お母さんによって完成された僕の性格


「お母さん、俺、こんなに、大きくなったんだよ?」

「ありがとう、お母さん」


やめて、ルキ…やめて


俺を呼ぶ声がする


ルキ、分かったから、許して…私を許して…


お母さん、何を言ってるの?許すも何も、こんなに好きなんだよ、お母さんのこと


もうこれ以上は……ルキ、あなたは、私の、子よ…


そう、俺は、お母さんの子

当たり前だ

だから、好きだ

俺は、冷静だ

当たり前のことをやってるまでだ



こんなこと、終わらせましょ…

行為の最中、突然お母さんが俺の腹へナイフを突き刺した


「お母さん、なんで…」

自分の口から血がドバッと溢れた


全て私のせい…だからもうこんなこと終わらせましょ…あなたも私も、一緒に死ぬの…


お母さん、なんで

お母さん、なんで………


それで俺は、お母さんの上に倒れた


お母さん、お母さん…好きだったのに……



ルキ、私も…愛してる………



オレンジ




「死にたかったの?」
私は彼にそう尋ねた。

「違うよ。」
彼は、少し考えてからそう言った。

「なんだ、私と一緒かと思った、でも私も、死にたくて腕切ってるわけじゃない、かもしれない。」
私は頭の中で色々考えながら答えた。

「でも、私とあなたは違いそうね。」

私はそう言った。

放課後という時間はこうにも奇妙だ。
起こるはずのないことが起こったり、学校内で行われる学校外の時間というのは、やはり不思議だ。
太陽も西に傾いている。風が廊下の窓へと続く。
教室から感じる放課後というものは、一つの違う時空に飛んでるような錯覚に陥る。

だから普段会話しない彼と今喋ってるのかもしれない。

私は家に帰りたくなくて、仕方なく教室に残っていたら、作業をしている委員長の彼も居残っていて、そこで私も彼の作業を手伝っている。

こんな事、聞いていいのか分からないけど…
沈黙の中、私は溢れるように呟いた。
「なんで、切ってるの?」
「あ、別に話したくなきゃいいんだけど…」
「でも、あなたが切ってるのは凄く、なんというか、不思議で、意外というか。」
「私も切ってるから、何か分かることがあるかも、とか、」
「あ、なんか、1人で喋ってた。ごめん。」

大丈夫だよ、と彼は笑った。

またこれだ、彼はいつも笑う。
彼はいつもニコニコしてるイメージがある。
一見、なんの違和感もなく、この人は温かい人なのかなって思ったりする、でもよく観察すると
そこに陰や闇が潜んでいる、気がするのだ
分かる人にしか分からないような。

笑ってる数ほど、その闇は大きく底がなく深い。
その闇が紛れもなく隠れていることが怖く感じる。
彼からはその妙な陰を感じる。
だから、腕の傷を見た時一瞬びっくりはしたが、どこか心の奥で納得している自分もいた。やっぱり、というような…
でも、そうはいってもやはり違和感でしかない。
それだからか、彼の笑顔はどことなく残酷に感じる。残酷で華麗で、暖かくて…
こんなに笑顔が似合う人は他にいないだろう。

彼の顔を見ながら考え事をしていたそうで、彼が不思議そうな顔でこっちを見て来た。
「あ、ごめん、私、ボーッとしてたみたい。」
慌てて私はそう、答えた。

「俺ね…。」
彼からそう、切り出した。
「君みたいに、死にたいわけでも生きたいわけでもないんだ。」
「自分って、凄く中途半端で。何処にいても、そこには存在させてくれないような気がして。」

何を言っているんだか、私にはよく分からない。

「彼は、傷は俺の象徴だと言った。何と無く分かるようなそうでないような…」
「今まで存在している事を自覚出来なかった。でも、彼に出会ってから、自分は彼のために存在してるんだと思えるようになった。だから、この傷は、その証なのかもしれない。」

彼、とは誰なのか…この人は何を言っているのだろうか…
私はキョトンとしてしまった。

「つまりね、俺も君と同じかもしれない。そうでないかもしれない。はは。」

また、彼は温かい笑みを浮かべた。
なんだろう。この笑顔を見ると何処か安心できる。

「私もね、そう思う。」

私も笑顔で答えた。

何も分からなかった。でも、何処か安心出来るような、何か細い糸で繋がっているようにも感じた。
それだけで、心は満たされた。

なんだ、これで心が満たされるのなら、私は腕を切らなくてもいいのかもしれない。
でも、やっぱり、難しいな。
今日、彼と話せてよかった。

太陽は2人きりの教室をますますオレンジに染めた。



手当たり次第人を殺そうと思った。


笑顔で、殺そうと思った。


つまらない毎日、生きる希望も見つからない。僕は、こんな毎日に老けてたんだ。

失踪事件、テロ事件、殺人事件、めくるめく起こる政。

泣きわめく街の中1人、僕は佇んでいた。

くだらない、とわきまえても本当はどこかで興奮してた、何かが起きる事。


きっと僕はつまらない、つまらない人間なんだ。でも、こんなところで終わらなくて


朝ママに行ってきますを言った後

ナイフを持ちながら街をふらふら出歩いた


街は変わってない気がした

色んなことが巡り巡ってるのに、建物はどんどん新しくなっていくのに

僕も変わっていない気がした、それに答えるように

これからもそうであって欲しかった


街中を歩くそして

僕は、ナイフを突き刺した



そう、これでいい、これでいいんだ

入っては行けないボーダーラインが段々とあやふやになってきだところで僕は、手を止めた


女の人の悲鳴

逃げる人

誰も僕に近づこうとしなかった

僕は立ち上がり移動しようとすると、たちまち周りの人は僕を避けた



僕は、僕は今初めて、生きてる気がした

ここに、初めて自分を見つけた

今まで朝起きること、ご飯を食べること、学校に行くこと、誰かと話すこと、授業を受けること、寝ること、何もかも、僕は生を感じることはできなかった


別に、それで一生を終えても構わないとどこかでは思っていたけど

僕は今、やっと、ここに自分を見つけた

これで、これでいいんだ



その後僕は、自分のお腹にナイフを突き刺した


そのあとは、そのあとは……



覚えていない


でも、僕の心は満たされた

僕は

僕は

幸せだ






あの時の君の顔を忘れない

どこかずっと遠い遥向こう側を見ているように感じた

君という存在が不思議でならなかった


桜の花びらに霞む君の横顔を見て

どこか、僕には踏み込めないようなところに君はいるのだと思った


きっと僕には理解できない

生きてるうちには少なくとも、理解できない

君という存在を理解できない



僕だけでなく、誰も入らないようなところに君は1人、立っていた

だから、僕もそこへ行きたかった

僕も、そこへ行ける資格のある人間でありたかった、でも

神様、いや君は、そんなに優しくはなくて


君は今日も1人で居た



寂しかった

僕は寂しかった

君を知りたかった

1人でどこを見てるか、何を考えてるかわからない君を、僕は知りたかった



君をもっともっともっと僕は………





目が覚めた


そうか、またこの夢を見た

夢の中で僕の昔の感情が疼いていた



起きたら、あちらこちら、傷跡があった

打撲、青痣、切り傷、擦り傷、根性焼き、、、


僕は僕自身を抱きしめた

そうか、これが、これが今の自分か……


これでも、僕は望みが叶ったんだ

何も怖くない




それは、あの時の君が、僕に残してくれた印だから





なんとなく死にたい


死にたい。

死にたい。死にたい。


ポツンと出た言葉。

し に た い

そう口はたわいもなく描く。


なぜ。なぜ?

理由はない。ただ、漠然と死にたいのだ。


生きる理由も死ぬ理由も見つからない。

見つかったとしても、生きることも死ぬこともできない。

生きてるか死んでるすらわからない。


僕は生きているのだろうか。死んでいるのだろうか。

目の前に猫の死体が落ちている。

でもそれは、あまりに漠然としていて、死んでいるという実感が湧かない。

本当に死んでいるのだろうか。死んでるってなんなんだろう。


そこに死はあっても、特に何も感じなかった。


だから、何回も猫を殺してみた、でも

死を実感出来なかった。



「僕はなんのために生きているのだろう」


沈む前の太陽に目を向ける。

そこまで眩しくなくて、ただ呆然と見つめていた。

また今日も終わってしまう


死にたい。死にたいな。

ふと思う。死にたいって。

理由もなく、漠然と。


それは地球の裏まで穴を掘って行けてしまいそうな気がしたから。

綿雲の上に乗せそうな気がしたから。

そんな漠然とした感情がよぎる。


なんとなく死にたい、と。