世の中が揺れ動いているんだ

一つ一つの器が

大きな歯車を動かし

そして狂わしていく

あなたの拒絶が

やがて大きなものを生み出し

動かし

壊され

破滅する

でも自分自身を傷つけてたら

世界はきっと自殺波動で蠢く

彼方此方で自殺の波動が揺らぐ

何処に行っても正解は存在しない

不確かでぐにゃぐにゃの世界

人の眼差しで黒く濁っていく

世の中は揺れ動く

何もないところから

それは始まる





私は濡れたコンクリートの上

水で蛍光灯の光が反射するコンクリートの上

そこに立っている

存在していることのおぞましさを感じている


一歩外に出るとそこは

私の身体全てが冷たい空気と触れ合う

指先まで、空気が触れている

冷たい粒子の羅列が自分の肌と触れ合う

とても生々しかった

初めて自分が存在していると感じた

凄く、重々しかった

赤い肉片が重なり合って一つの生き物として存在している

肉片と肉片を積み重ねて、生き物の形をしている

この世界の在り方はとても適当で、自分という存在に違和感を感じていて、景色はいつなんどき歪んで見える


粒子が淀んでる

大地が眠りに着こうとしている

地球の静寂を感じる

そろそろ秋なんだ




共犯



僕は君の身体に傷をつけた

沢山の傷をつけた時

君はにっこり笑って力無く

「共犯だから」

という


それを聞いて僕はいつもゾクっとする

また何度でも虐めたくなる自分がいる

全部君が悪いんだ


カッターナイフで君の身体に傷を切り刻んでる時

ひたすら苦しそうに涙を流しながら叫び声をあげる君

でも、それを押し殺そうと必死でぐちゃぐちゃになってる君

それでも決して「やめて」とは言わないんだ

僕は興奮してアドレナリンが止まらなくなる


君が辛そうで、面白いから


終わった後、君は僕の横でぐったりなるんだ

君はいつだって僕に縋っている


もう僕なしじゃ生きられないってね



僕の身体



不自然に綺麗に並ぶ僕の腕の傷跡

今日も彼に会うんだから

身だしなみはちゃんとしなきゃ、ね


君を求めれば求めるほど

腕の傷跡は増えていくよ

「i miss you」

心と腕に刻みつけるんだ


君は僕を優しく嗜んで

そして冷たく突き放す

そんな彼に僕は虜になる

嫌われたくない、見放されたくない

その為ならなんだって我慢できる


だってそれは彼からもらった傷だから


まるで麻薬を吸ってるみたいなんだ

彼に支配された僕の身体と心

全て彼で満たされてる

だからもうどこにも行かないで

あなたが消えてしまったら

心の穴が大きすぎて

どう生きていけばいいか分からないよ

だから、今より沢山、傷つけて

めちゃくちゃにして、ぐちゃぐちゃにして

切り刻んで




オレンジ




「死にたかったの?」
私は彼にそう尋ねた。

「違うよ。」
彼は、少し考えてからそう言った。

「なんだ、私と一緒かと思った、でも私も、死にたくて腕切ってるわけじゃない、かもしれない。」
私は頭の中で色々考えながら答えた。

「でも、私とあなたは違いそうね。」

私はそう言った。

放課後という時間はこうにも奇妙だ。
起こるはずのないことが起こったり、学校内で行われる学校外の時間というのは、やはり不思議だ。
太陽も西に傾いている。風が廊下の窓へと続く。
教室から感じる放課後というものは、一つの違う時空に飛んでるような錯覚に陥る。

だから普段会話しない彼と今喋ってるのかもしれない。

私は家に帰りたくなくて、仕方なく教室に残っていたら、作業をしている委員長の彼も居残っていて、そこで私も彼の作業を手伝っている。

こんな事、聞いていいのか分からないけど…
沈黙の中、私は溢れるように呟いた。
「なんで、切ってるの?」
「あ、別に話したくなきゃいいんだけど…」
「でも、あなたが切ってるのは凄く、なんというか、不思議で、意外というか。」
「私も切ってるから、何か分かることがあるかも、とか、」
「あ、なんか、1人で喋ってた。ごめん。」

大丈夫だよ、と彼は笑った。

またこれだ、彼はいつも笑う。
彼はいつもニコニコしてるイメージがある。
一見、なんの違和感もなく、この人は温かい人なのかなって思ったりする、でもよく観察すると
そこに陰や闇が潜んでいる、気がするのだ
分かる人にしか分からないような。

笑ってる数ほど、その闇は大きく底がなく深い。
その闇が紛れもなく隠れていることが怖く感じる。
彼からはその妙な陰を感じる。
だから、腕の傷を見た時一瞬びっくりはしたが、どこか心の奥で納得している自分もいた。やっぱり、というような…
でも、そうはいってもやはり違和感でしかない。
それだからか、彼の笑顔はどことなく残酷に感じる。残酷で華麗で、暖かくて…
こんなに笑顔が似合う人は他にいないだろう。

彼の顔を見ながら考え事をしていたそうで、彼が不思議そうな顔でこっちを見て来た。
「あ、ごめん、私、ボーッとしてたみたい。」
慌てて私はそう、答えた。

「俺ね…。」
彼からそう、切り出した。
「君みたいに、死にたいわけでも生きたいわけでもないんだ。」
「自分って、凄く中途半端で。何処にいても、そこには存在させてくれないような気がして。」

何を言っているんだか、私にはよく分からない。

「彼は、傷は俺の象徴だと言った。何と無く分かるようなそうでないような…」
「今まで存在している事を自覚出来なかった。でも、彼に出会ってから、自分は彼のために存在してるんだと思えるようになった。だから、この傷は、その証なのかもしれない。」

彼、とは誰なのか…この人は何を言っているのだろうか…
私はキョトンとしてしまった。

「つまりね、俺も君と同じかもしれない。そうでないかもしれない。はは。」

また、彼は温かい笑みを浮かべた。
なんだろう。この笑顔を見ると何処か安心できる。

「私もね、そう思う。」

私も笑顔で答えた。

何も分からなかった。でも、何処か安心出来るような、何か細い糸で繋がっているようにも感じた。
それだけで、心は満たされた。

なんだ、これで心が満たされるのなら、私は腕を切らなくてもいいのかもしれない。
でも、やっぱり、難しいな。
今日、彼と話せてよかった。

太陽は2人きりの教室をますますオレンジに染めた。



手当たり次第人を殺そうと思った。


笑顔で、殺そうと思った。


つまらない毎日、生きる希望も見つからない。僕は、こんな毎日に老けてたんだ。

失踪事件、テロ事件、殺人事件、めくるめく起こる政。

泣きわめく街の中1人、僕は佇んでいた。

くだらない、とわきまえても本当はどこかで興奮してた、何かが起きる事。


きっと僕はつまらない、つまらない人間なんだ。でも、こんなところで終わらなくて


朝ママに行ってきますを言った後

ナイフを持ちながら街をふらふら出歩いた


街は変わってない気がした

色んなことが巡り巡ってるのに、建物はどんどん新しくなっていくのに

僕も変わっていない気がした、それに答えるように

これからもそうであって欲しかった


街中を歩くそして

僕は、ナイフを突き刺した



そう、これでいい、これでいいんだ

入っては行けないボーダーラインが段々とあやふやになってきだところで僕は、手を止めた


女の人の悲鳴

逃げる人

誰も僕に近づこうとしなかった

僕は立ち上がり移動しようとすると、たちまち周りの人は僕を避けた



僕は、僕は今初めて、生きてる気がした

ここに、初めて自分を見つけた

今まで朝起きること、ご飯を食べること、学校に行くこと、誰かと話すこと、授業を受けること、寝ること、何もかも、僕は生を感じることはできなかった


別に、それで一生を終えても構わないとどこかでは思っていたけど

僕は今、やっと、ここに自分を見つけた

これで、これでいいんだ



その後僕は、自分のお腹にナイフを突き刺した


そのあとは、そのあとは……



覚えていない


でも、僕の心は満たされた

僕は

僕は

幸せだ






あの時の君の顔を忘れない

どこかずっと遠い遥向こう側を見ているように感じた

君という存在が不思議でならなかった


桜の花びらに霞む君の横顔を見て

どこか、僕には踏み込めないようなところに君はいるのだと思った


きっと僕には理解できない

生きてるうちには少なくとも、理解できない

君という存在を理解できない



僕だけでなく、誰も入らないようなところに君は1人、立っていた

だから、僕もそこへ行きたかった

僕も、そこへ行ける資格のある人間でありたかった、でも

神様、いや君は、そんなに優しくはなくて


君は今日も1人で居た



寂しかった

僕は寂しかった

君を知りたかった

1人でどこを見てるか、何を考えてるかわからない君を、僕は知りたかった



君をもっともっともっと僕は………





目が覚めた


そうか、またこの夢を見た

夢の中で僕の昔の感情が疼いていた



起きたら、あちらこちら、傷跡があった

打撲、青痣、切り傷、擦り傷、根性焼き、、、


僕は僕自身を抱きしめた

そうか、これが、これが今の自分か……


これでも、僕は望みが叶ったんだ

何も怖くない




それは、あの時の君が、僕に残してくれた印だから